2次形式を対称行列を使ってとするとき、を2次関数のヘッセ行列といいます。ヘッセ行列は2階微分(参考:ベクトルをベクトルで微分の定義とヘッセ行列)を指すことが多そうですが、2次形式の対称行列もヘッセ行列と呼ぶようです。*1 今回はこのヘッセ行列を使って2次関数の最大値、最小値の存在を判定する方法を確認します。
任意の2次間数は、平行移動することによって2次の項と定数のみで表すことができます。また、任意の2次形式は対称行列を使って表すことができます。(参考:2次形式と対称行列) 最大値/最小値の存在を考える場合において、定数項は影響しませんので、ヘッセ行列を用いたの形を考えれば十分です。
まず、ある直交行列により、で変換すると、
となります。
対称行列は直交行列を用いて対角化できますから(参考:対称行列の対角化)、固有値で構成される対角行列をとすれば、ですから、式(2)は
となります。ここで2変数の場合を考えます。として式(3)を書き出せば、
となります。この変形によって、何が行われたのか?は以下の図がわかりやすいです。図中の曲線は2次関数の等高線を表しています。
元の2次形式でも何らかの方法によって最大値/最小値の存在を判断することはできると思いますが、座標変換によって二乗の項以外を無くしてしまうことで、その係数の正負だけを見れば判断できるようになります。つまりは、固有値が共に正のときに唯一の最小値をとり、固有値が共に負のときに唯一の最大値をとります。の符号が異なるとき、以下のようなグラフになり、最大/最小値を持ちません。なお固有値が全て正の対称行列を正定値行列、全て負の対称行列を負定値行列といいます。
以上より、2次関数のヘッセ行列が正定値行列なら、唯一の最小値をとり、負定値行列なら唯一の最大値をとる、ということが確認できました。同様のことは2変数だけでなく変数の場合でも成り立ちます。
続き:ヘッセ行列で極値の判定
*1:2次形式を二階微分してヘッセ行列を求めると、元の二次形式はと書ける。